「我々を応援してくださる方に、勝利をお届けしたい」

 アイスランドとの壮行試合を翌日に控えた森保一日本代表監督は、例によって勝利を強調した。勝利よりも大切なものがあるのではないかと問われても、その姿勢を崩さなかった。バランスの問題とはいえ、森保監督は目の前の試合に勝利を欲する姿勢が、よくも悪くも強い監督である。

 親善試合が全試合の半数以上を占める代表戦。その勝ち負けは、4年に1度のW杯の結果を意味するーーとの解釈ではない。一戦一戦、勝利を積み重ねる姿勢はどちらかと言えば、主に毎シーズン、リーグ戦を戦うクラブ監督的な発想だ。

「代表戦に負けていい試合はひとつもない」。「代表チームは常にベストメンバー編成して臨むもんや」とは、およそ30年前、W杯初出場を目指した加茂周監督の口癖だったが、森保監督もそれに近い考え方だ。

 W杯の目標が無敗を意味する「優勝」なってしまう背景がそこに透けて見える。森保監督が口にする優勝というそのキャッチーな台詞を噛み砕くことなく、無頓着に媒介する報道機関も同じ穴のムジナになる。そればかりが代表サッカーの考え方ではないにもかかわらず。

 サッカーの魅力は、その方法論ではあぶり出すことができない。

「勝利と娯楽性をクルマの両輪のように追求すべし」とは、ヨハン・クライフの言葉だが、それをクライフ本人の口から直接聞かされたのはバルセロナの監督時代だった。1993年頃、ドーハの悲劇前後だったと記憶するが、加茂周監督が日本代表監督の座に就いたのはその翌年の12月だった。

 その間に日本が初出場を逃した1994年アメリカW杯は開催されている。最も印象に残る好試合をひとつ挙げよと言われれば、準々決勝のブラジル対オランダ戦になる。スコアは3-2。勝ったのはブラジルだったが、見ていて楽しい娯楽性満点の試合だった。

 舞台となったスタジアムはダラスのコットンボウル。今回のW杯で、日本がオランダと初戦を戦うスタジアムであることは言うまでもない。オランダにとっては思い出深い、負けられない舞台となる。
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